「鈴君…。私も、鈴君がいてくれたから、一人ぼっちじゃなかったんだよね。一番辛いときに傍にいてくれてありがとう…」



私、この世界に来て良かった。
私はちゃんとここに来た意味があるんだ。
それは、私が皆に出会う為だったんじゃないかな?



「私は…ちゃんとここにいる。今はアルサティアの巫女として。」



もう迷うのはやめよう。
私を信じてくれた人達の思いまで否定する事になる。


「俺たちはこの手で未来をを作っていくために今戦うんだろ」


「エルシス……。そうだね、人は未来を自分の力で変えていけるんだから…」



私はこの世界に来て知った。
一人でいた孤独も、私が踏み出せなかったからだったんだって。



居場所は自分が望んだ所にあって、自分で作るものなんだって…



なら、未来も変えていける。
私達が、望めばいくらでも!!





『あれ。もう立ち直っちゃったの?つまんないなぁー。ま、いいや!』



フェルはくるりと一回転して私を見つめる。



『さぁ、僕に見せてよ。君に、未来を変える力があるというのなら…』



フェルは両手を広げる。


―フワァッ


本が表れ、フェルは残酷な笑みを浮かべる。


『さぁ、僕は綴ろう!本来あるべき物語を!魔王が壊すアルサティアを!』



―パラパラパラッ!


本のページが物凄い勢いでめくれる。
そして、黄金の光を放った。




―パァアアッ!!



「この光……。まさか、フェルは物語を!」



私が白の結末を綴る時と同じだ。
じゃあ、フェルの望んだ世界になっちゃう!!



「させるか!!」


エルシスは剣を抜いてフェルへ斬りかかる。



『無駄だよ』


―キィィンッ!!


エルシスの剣は、何故か見えない壁にぶつかり、跳ね返る。



「エルシス!!」


「あぁ、大丈夫だ…。くそ、剣が届かない!!」


私達はただ見てることしか出来ないの?
どうしたら……



『さぁ、魔王。壊すんだ、アルサティアを!』


フェルの言葉に鈴君は目を見開く。



「う…ぁ…ああああっ!!!」



突然鈴君が叫び、頭を抱える。
鈴君の体を黒い闇が包み込んだ。



「鈴君!!」


駆け出そうとする私の腕を、エルシスが掴んで引き留める。



「馬鹿!今行けば死ぬぞ!!」

「でもっ、鈴君が!!」



鈴君は俯いたままゆらりと立ち上がる。
なにか様子がおかしい…




「空気が変わった。鈴奈、俺の後ろに隠れておけ」


エルシスは息をのんで剣を構える。



『魔王の、登場~♪』


「…………………………」




そして、優しいもう一人の私である魔王は、無表情で私たちに片手を向ける。



「鈴君……?」



冗談だよね?私たちやっと分かり合えたのに…


「来るぞ!!」


エルシスが私を抱き抱えて叫んだのと同時にすぐ私達の横を闇の球体が飛んでいく。


―バァアアンッ!!



球体が壁にぶつかり、壁が壊れる。



あんなのにあたったら…死んじゃう!!
咄嗟にエルシスが私を抱えて避けてくれたからいいけど…



「エルシス……」


「くそ!次は無いな…。せめて、俺に力があれば……」


エルシス………
私は何も出来ないの?
私にも何か力があれば……