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これは、遠い日の記憶ー…



「ねぇ、鈴君」


誰もいないはずの家で、幼い私は誰かに話しかける。



『なんだ?また寂しくなったのか』


そう、鈴君は私の中にいる友達。
私の、『鈴奈』の名前からとって鈴君と呼んでた。



「うん。だって、あるさてぃあは本当にはないんだよね。おかあさんが言ってた」




本の中だけの空想の世界。
私はいつか、このアルサティアにすら行けると思ってた。



でも………これは物語でしかないんだと知った。



『そうだな。本当には存在しない』

「どうして……私はあるさてぃあに行けないの?」


『物語は物語でしかないからだ』




私は……またひとりぼっちになった。





この本が、大好き。
私に心と夢と居場所をくれたから。


でも………
この本は私から夢と居場所を奪った。



私は………また一人……


「嫌い……」



ただ誰かが傍にいてくれればそれでよかった。
誰かに必要とされ、求められたかった。



一人ぼっちになるのは嫌。
また誰かの帰りを待たなきゃいけないの?
また私を苦しめるの?


「こんな本……いらない!」



―バンッ!!



本を投げ捨てる。


「う…うわぁぁぁんっ!!」


目を両手で覆い泣いた。

視界に広がる闇が、私の存在ごとのみ込んでくれればいいのに…


そうしたら、こんなに苦しむことなんて無かったのかもしれない。