「綴られていない…」
まだなの?
本を待っていたら手遅れになる。
ラミュルナ王女がいる牢、魔王のいる場所は一体どこに…?
「鈴奈、お前体は大丈夫なのか?」
エルシスは私の背を支える。
「…大丈夫、なんともな…」
「嘘をつくな、医師を呼ぶ、ちゃんと見てもらえ!」
エルシスは少し怒ったように私を見つめる。
「ごめんエルシス、でももう少しだけ待って。今はやらなくちゃいけない事があるから」
「駄目だ!命より大事なものなんて……」
エルシス、ごめんね…
これだけは譲れないから…
私の真剣な顔を見て、エルシスは口を閉ざした。
「ラミュルナ王女を助けにいこう」
「!?いや、癒しの姫は数年前に死んで…」
「死んでない。ラミュルナ王女は生きてる」
「そんな馬鹿な…」
「本当、私、ラミュルナ王女に会ったから。ラミュルナ王女は魔王に捕らわれてる、冷たくて湿った暗い地下牢に今もたった一人で…」
約束をしたんだ。
必ず助けに行くって………
もう迷うのはやめよう、目の前にいるこの人の為に。
「会ったって何処で…」
「夢の中で、私は確かにラミュルナ王女に会った。私を信じて、ラミュルナ王女を助ける事がエルシスのいう大切な者と終わりなき未来を歩むことに繋がるの」
今は私かもしれないという淡い期待…
でもそれも、ラミュルナ王女と出会うまでの事。
二人が出会えば、エルシスにとっての大切な者は変わる。
「…何を言ってるんだ?俺の大切な者は…」
「…エルシス!!」
「!!?」
突然大声を出した私をエルシスは驚いたように見つめる。
「……お互いに辛いだけだから…。大丈夫、すぐに忘れられる。だってエルシスは…」
ラミュルナ王女を愛するんだから…
「っ…!お前がそれを言うのか?お前を…
お前を想う俺に、忘れられると!?」
「っ!!」
想う……
想うなんて言わないでよ……
苦しいだけ…苦しいだけじゃん!!
「…っ……出てって」
「…くそっ…俺は…俺はっ…!!」
何か言いたげに私を見たエルシスだったがすぐに私に背を向ける。
「すまないっ…」
エルシスの顔は見えない。
それでもわかってしまった。
エルシスは…泣いてる………


