巫女と王子と精霊の本



「簡単な事だ、俺に身も心も預ければいい」


エルシスの手が温かい……

背に触れたままの手が私の不安を和らげていく。



身も心も預けられたなら、そんな事が出来たらどんなに幸せだろう。
世界の事も全て忘れてエルシスに私の全てを預けられたなら…


「一人で無理なら俺が力になろう。誰にもお前を傷つけさせないと誓う」



あぁ…なんて贅沢なんだろう。
私は大好きな人にこんな嬉しい言葉をもらえて…


でも、応えられない。
エルシスが幸せになる方法を知ってしまったから…



「エルシス」


背に触れたままの手を拒絶すようにエルシスに向き直る。


「鈴奈?」


エルシスは不安気な顔で私を見つめている。



「近い未来、エルシスは幸せになれる」



もう、すぐ傍にあなたの幸せがあるんだよ。



「物語が綴られたのか?」

「うん。でも、私は最初から知ってたの。この未来だけは…」

「そういえば、お前は出会ってまもない頃、同じような事を言っていたな」

「…え……?」



出会ってまもない頃……?


「覚えてないか?お前は、俺に言っただろう。何があっても諦めるな、諦めなければ必ず幸せになれるから…と」


「あ……」


それは嵐がカイン国を襲った後すぐの事だ。私とエルシスが交わした約束…


「私が希望になるからって…」

「ああ、だから俺は諦めずに立ち向かえた。お前を、お前という希望を信じていたからな」

「……うん、信じてくれたから、諦めずにいてくれたから、あなたは幸せになれる」



もうあと少しなんだ。
あと少しで…


「ただ、お前が言う俺の幸せに不安を感じる時がある」

「不安?」


エルシスが不安に思う事なんてない。
物語通りに進めば、エルシスは…



お姫様、ラミュルナ王女と幸せになれるんだから…