「これは、魔王によってもたらされた災厄です」

「魔王!?まさか百年前に人の王によって倒されたはずだぞ!!」



私は本を開き、ページをめくった。


―百年前、人の王に倒された魔王は、百年の眠りにつき、力を蓄えます。


百年後、力を蓄えた魔王は、人間へと復讐を果たす為、アルサティアに災厄をもたらしました。


そうか、物語では百年前の魔王が再び目覚め、災厄をまいたんだ。


「魔王は百年の眠りから覚め、復讐の為に今回の災厄を…」


物語の通りに説明すると、皆は不安そうに海に沈む国を見下ろした。


「…このままでは駄目だ。魔王と戦わなければ世界は滅ぶ」


エルシス王子は、沈んだ国を悔しそうに見つめながらそう口にした。


「魔王を探しだし、共に戦おう!!自分の生きる場所は自分の手で守るのだ!!」


エルシス王子の言葉に、皆が頷く。


「そうだ…俺達が守るんだ!!」

「もう失わない為に!!」


皆の声が一つになる。
エルシス王子は…皆の希望だ…。


そして、私の希望でもある。


「女、お前の力を貸してくれ。アルサティアの巫女として俺達を導いてくれ」



エルシス王子の言葉に、私は強く頷いた。


「娘、名前は?」

「…私は鈴奈」

「鈴奈、俺はエルシス・カインだ。何があっても、おれはお前を守る。だから信じろ」


その言葉に、胸が苦しくなる。鼓動が早い…




巫女だからだとしても、守ると言われた事が嬉しかった。


「アルサティアの巫女として、あなたの道標になるよ」

「俺はお前の盾になる」


私達は互いに笑みを交わす。


こうして、私はアルサティアの巫女となった。


この世界の未来を変える為に…。