巫女と王子と精霊の本



「ここにいたのか!!」

「!!」


途方に暮れるあたしの前が突然陰る。




突然聞こえた声に顔を上げると、そこには、馬に跨がった男の人、この世界で初めて会った男性がいた。


この人、あの時あたしに声をかけてくれた人だ。



「探したぞ!!津波から逃げ切れたんだな。怪我人はいないか?」


男性の言葉に皆が安心したような顔を見せる。


「エルシス王子!!わしらの為に来てくれたのですか!!」

「ママ!王子様だぁ!!」

「これでもう安心だわ!」


皆が希望を見つけたかのように目を輝かせる。


待って…今エルシス王子って言わなかった…?
まさかまさか…!?


「あなたがエルシス王子だったの!?」

「なんだ、俺が誰なのか知らなかったのか?」


嘘でしょう!?
この世界に来て一番にエルシス王子に会ってたなんて…。


あたしのバカ!!
何で、名前を先に聞かなかったんだろう!!



「私、あなたを探してたの!!会えて良かった!!あなたに話したい事が沢山あるんだけど、今は…」


「まずはハルバレーの丘まで行くぞ」


私はエルシス王子の言葉に頷く。


そうだ、今はここから離れなきゃ。
じきに波がこの丘さえものみこんでしまうから…。


「皆、あと少しの辛抱だ!!」


エルシス王子の一言で、皆が立ち上がる。


すごい…エルシス王子は、本当に皆に慕われてるんだ。
この人には、人を動かす力がある…。