巫女と王子と精霊の本




しばらく沈黙が続いた。
でもそれを苦には感じない。


それほどまでにエルシスとの距離が近くなっていたことに気づく。


私は……エルシスの事………



「……っ……」



そこまで考えて頭をブンブンと横に振った。


考えるのはやめよう……
後で苦しむのはわかってるんだから…



―シュルンッ



「…うん?」


今なんか足元を横切ったような……



―シュル、シュル!!


「へ……ひゃあああっ!!?」


ヌメヌメしたものが私の足から体に絡み付き、体を締め付ける。


「鈴奈!!?」


慌ててエルシスが泉へと飛び込んでくる。


「あっ…!?」



私の姿を見たエルシスが真っ赤になって俯いた。


「な、どうしろっていうんだよ…」


エルシスが何かを呟いている。



私が裸でなんか捕まるから……
なんというか、どうしよう!!



「へぇ、あんたが巫女かい?」

「……え……?」



するとすぐ後ろで声が聞こえた。


「可愛いねぇ、若い女は好きだよ?いい人形になる」


に、人形!!?


「あ、あああなた誰!!?」

「私は砦の魔女だよ、アルサティアの巫女。私を探してたみたいだからね、こちらから探しに来てやったってわけさ」


砦の魔女は紫の長い髪に金の瞳を持った妖艶な女性だった。


「鈴奈を離せ!!」



エルシスは剣先を魔女へと向ける。


「あら、ぼうやもいたのかい。若い男もいいねぇ、私の人形にしてあげる」


魔女は楽しそうに笑い、私の体を撫でる。



「ひゃっ…!?」


い、いまこの人私の胸触った!?


「貴様!!」



エルシスが踏み出した瞬間―…



「動くんじゃないよ、ぼうや。この子に傷をつけたくないだろう?」

「あぁっ…」



魔女が私の頬を爪で引っ掻くと、そこから血が出た。


い、痛っ………
こ、怖いよ………………



「くそっ…卑怯な………」

「ふっ…少しお喋りをしないかい?なんせ、私は退屈しててねぇ…」



魔女は私の髪を指で弄ぶ。



長い爪………
爪には赤色のマニキュアようなものが塗られている。