巫女と王子と精霊の本




「…エルシスは、私なんて好きにならないよ。そう決められてるの」


お姫様と幸せになる為に今の辛さがある。きっとエルシスはその人とじゃなきゃ幸せになれないし、お姫様しかエルシスを救えない。



「…鈴奈、ならなんでそんな顔すんの?」


「……え?」


セキは私の頬を撫でる。



「泣きそうな顔」



私は今そんな顔をしてるの?
なら、駄目だ。誰にもこの気持ちは明かせない。隠さなきゃ……



「…そんな事ないよ、セキってば大袈裟だよ」

「…辛いね、鈴奈。巫女って気持ち抑えなきゃいけないほど重い使命なの?」

「…どうかな、でも私で良かったって思うよ」


その事に後悔はないから…
これだけは胸を張って言える。



「…貰い手いないなら俺が貰ってあげるよ、鈴奈」


-鈴奈。


セキが私を名前で呼ぶ時は真剣に私に接してくれてる証拠のような気がした。



励まして…くれてるのかな……


「…ありがとう、セキ。頼りにしてる!」



私はわざと明るく振る舞ってエルシスの背を追いかけた。



「……そんなに辛そうに笑って、隠せてると思ってんのかね、あの巫女サマは…」



逃げるように走る私をセキが何とも言えない表情で見ていた事には気づかなかった。