「はぁ、はぁ」 息を切らして走る。 人の間を縫うように、人込みを走っていく。 ─何を、目指してるんだろう。 私は、何から逃げてるんだろう。 彼女は、わからないまま走っていく。 疲れた顔のサラリーマン。 ケータイをいじる、学生。 楽しそうに話す大学生。 彼女の目には、全てが眩しく写っていた。 「はぁ、はぁ」 ─逃げて。 なにかがそう伝えてる。 ─逃げて、まだ間に合うよ。 何から? どこへ? わからない。 少女は走る。