「兄貴の名前はレイ?
 洒落てるな」

「違う。
 兄貴はなおき。
 母が“それでも尚、希望を持って”の意味でつけた」


じゃあ誰だよ。

それが聞きたくての質問なのに。

乱暴にきゅうりをちぎったレタスの上に投げた。


「前に話さなかったっけ?
 さやかの弟」


涼はちらりと肩越しに振り返った。

水のようにワインを飲んでいる。