”キレイ”な愛

「見てみろよ」


ポケットから携帯を取り出し、突き出した。

綺樹の顔が無表情になる。

歩み寄ると涼の携帯を取り上げて、そのまま落とした。


「無意味だ」


脇を通り際に、ちらりと涼を見て、ウォーキングクローゼットへと入って行った。

涼の口元に苦い笑いが浮かんだ。

なにやってんだか。

軽蔑した目で見られて当然だ。

携帯見せれば信用を得られると思うなんて、どんだけ安い男なんだ。

落とされた携帯を拾い上げて、画面を開ける。

初期設定のそっけない画面。