”キレイ”な愛

  *
綺樹がバスルームから出ると、向かい側の壁に涼が寄り掛かっていた。

制服姿で、片手にカバンを持ったまま腕を組み、じっとみつめている。


「お早いお帰りで」


いささか驚いて綺樹はそう言った。


「おれと一緒に住んでいる間は、他の男と遊ぶな」


低い抑揚の無い声で言う。

綺樹は前髪をかきあげてリビングへ歩きだした。


「自分のことを棚にあげて?」


そっけなく言うとサイドボードからブランデーのボトルを出した。


「誤解だ」


綺樹は涼の言葉にグラスに口をつけながら、片眉を上げた。