”キレイ”な愛

「綺樹」


はっとしてドアについていた頬杖を外した。


「食材、買って帰るぞ」


スーパーの前に車は止まっていた。

涼は慣れた様子で食材を選び、会計を済ませている。

綺樹といえば会計の際にカードを取り出したぐらいだ。

それも、涼の“いらない”の一言で使わなかった。


「誰かさんのおかげで、金には困らなくなった」


食材の入った紙袋を抱えて、涼は薄く笑った。

自嘲のようにみえる。

涼はその代償をどのように受け止めているんだろう。

スーパーから綺樹のマンションには歩いて帰れる距離らしく、迷いの無い足取りで進んでいく涼の後をついていきながら、綺樹は考えていた。


「西園寺を継ぐ気になった、最大の要因は何?」


オートロックを開けながら、綺樹は聞いた。