”キレイ”な愛

綺樹は真剣な顔で天丼に挑んでいる。


「いいよ。
 おれ、食べるから」


涼の諦めめいた声に、今度は素直に明け渡した。


「どう?」


唐突の声かけに涼が天丼から目を上げると、綺樹は頬杖をついてこちらを見つめていた。


「ん?」

「西園寺」


その話がきたか。


「あんなもんじゃない」


食べるのを再開する。


「突然現れたんだから、歓迎はしないだろ。
 当てにしていた遺産が持ってかれるんだから」


涼のあっさりとした表情を綺樹は見つめていた。


「詐欺だろうと疑われて、DNA検査までしたよ」


綺樹がくすくす笑っている。