綺樹は視線を外からフェリックスの顔に移した。


「おまえが侮辱した、私の母が愛用していた香水だ」


不快に顔をしかめるかと思っていた。

だがフェリックスは表情を止めて、綺樹と視線をあわせたままだった。

この男にも何か過去があるのか。

不思議に思っていると、動いたのはフェリックスだった。

くちびるが合って、舌が入ってくる。