”キレイ”な愛

  *

「もう、帰るの?」


涼はその心細い声音に綺樹の顔を思わず見つめた。

頼りない顔をしている。

こういう顔ができるのか。


「うん。
 そんなに長く放っておけない患者が何人かいるから」


言われた相手の尚也は微笑し、綺樹の頭をぽんぽんと叩いた。


「またすぐ来るよ」


嘘だとわかっているのか、綺樹は深く視線を下げた。