涼から電話をもらったさやかは尚也に連絡し、日本に飛んでもらった。


「うん。
 当たり前だけど、忘れてしまった記憶が気になるみたいだね。
 根を詰めても思い出すものではないから、気楽にいるようにと言っている」

「そうですか」

「涼は、まだそちらに?」


尚也は嬉しそうに笑ってうなずいた。


「いるよ。
 僕がいる間は、出て行こうとしたんだけど、それじゃあ解決にならないからね」

「記憶喪失の原因は排除した方がいいのでは?」

「だけど、失った記憶は彼と一緒に住んでいた部分だけだから」


それにね、といたずらっぽく笑った。