”キレイ”な愛

綺樹は自嘲を浮かべた。


「ああ、そう」


それはどういう意味だ。

綺樹の反応はいつも分かりづらい。


「うるさい男もいないしな」


この間の別れ際に言われた台詞を言うと、綺樹はくちびるの両端をちょっとだけ動かした。

笑おうとしたのかよく分からない。


「書類は?」

「ああ、家」


綺樹が片眉を上げた。


「考えてみれば、おまえに返すんだ、
 あそこに置いとけばいい話だろ」


綺樹はため息のように長く息を吐いた。


「じゃあ、おまえはわざわざこんな時間に、わざわざここまで何しに来たの?」


嫌味たっぷりだ。