”キレイ”な愛

「悪いけど、そこに行く気がしない。
 どこか場所を指定してくれ」

「そうか。
 わかった。
 じゃあ、今からそこに行く」

「近くにきたらまた電話して。
 今日もう、来客は時間的にビルに入れないから、外へ出てくから」

「ん」


あれほど煮えくり返っていた胸の内が、今の会話で落ち着いていた。

いつもの落ち着いたアルトの声のせいだろうか。

終電が終わっている時間の上、今から西園寺の車を呼ぶのも面倒で、涼は大通りに出てタクシーをつかまえた。