”キレイ”な愛

グレースの躊躇いがちな態度はわかる。

戻ったらと思うのだろう。

だけど、ね。

綺樹は口元に笑いを作る。

自分の推測を裏付けるために、ホテルに向う前にマンションに寄った。

手前でタクシーを乗り捨て、少し離れたガードレールによりかかると、煙草に火をつける。

いつもこの1時間以内に、涼は西園寺の勉強を終えて戻ってくる。

留守の間に部屋に入るのは嫌だった。

家にいるだろう時に尋ねるのも嫌だった。

一人じゃないだろうから。