「そんなに慌てて離さなくても」
あたしはあなたみたいに異性の人に慣れてないんです!!
心の中で盛大に抗議したが、結局マフラーに首を埋めることしかしなかった。
「笹原さん髪染めてないよねー?
今まで一回も染めたこと無い?」
話が戻って、矢野が何気ない仕草で恵の毛先を撫でた。
──だから、あたしは男慣れしてないんだっつの。
「ないよ。髪傷みそうだし」
できる限り平静を装って答える。
親譲りの真っ黒な色も真っ直ぐなストレートも恵のちょっとした誇りだ。
髪を染めたい、とかパーマをかけたいとか思わない。
メニュー