ナクシタモノ



しばらく睨み合いは続いた。

そしてボクは思い出す。


そういえば、買い物してたんだった…。

11月だからものが腐るなんてことはないと思うが悠里が確かアイスを買っていた。

流石にこの時期だろうとアイスは溶ける。

勇気を出しし、無言で睨み合いをしていた悠里に声をかける。


「悠里、ゆーり」

「……。」

「ゆーりってば!」


悠里がボクの声に気がつき視線をこちらに移す。


「早く帰らないと、買ってたアイス溶けちゃうよ?」

「あ…そうだった!」


やっと正気に?戻った悠里と再び歩きだそうとして、ポケットの中に入っているものに気がついいた。

急に進行をかえたボクに悠里は驚いたような声を上げる。


「燐?!」


その声に微笑みながら烙刃の目の前まで歩いていく。


「烙刃さん、これ、携帯ありがとうございました。」

「あいつ…本当にお前の恋人なのか?


その問いに微笑み返しながら携帯を手渡す。


「もう会うことはないでしょう。さようなら…ありがとうございました。」


それだけ言い残してボクは立ち去った。

本当はもっとちゃんとお礼をしたほうがいいのかもしれない。

あの時、助けてもらわなかったら悠里に会うことはなかったのだから。


「もういいの?」


悠里が聞いてくる。


「うん、ちゃんとお礼は言えたから。」


そっか、と言いながら微笑んでくれた悠里。

ボクも微笑み返しながら、家までの道を歩く。

幸せをかみしめながら。





この幸せを壊されるとも知らずに…。