４月中旬、新入生たちが授業中の教員にバケツの水をかけるという悪戯が発生した。


被害は主に、生徒に嫌われている数学科の教員たち…らしい。


蒼先生も数学科、被害に遭わないか心配。





ある日の１限、今日はアンジェは休みなのかな？

なんて思いながら、数学の授業を受けていた時のこと。



突然、教室の扉が開かれ、蒼先生めがけてバケツの水がかけられた。



「うわ…、僕までやられるとは思わなかった…。」


頭から水を被った蒼先生が、呟いた。



男子生徒が悪戯しているものだと思っていたけど、水をかけたのは２人の女子生徒だった。


「ここのクラスの数学教師、超イケメンじゃん…。」


「見惚れてる場合じゃないって、顔覚えられる前に逃げようよ…。」


新入生たちが回れ右をして逃げ出そうとしたら、その前を女子生徒が立ちはだかった。


美人だけど、赤茶色の髪を逆立てて、左耳にはルーズリーフの如くリング状のピアスを付けた彼女が、灰色がかった目でひと睨みする。


アンジェの風貌にビビった新入生たちは、その場にへたりこんだ。