今年は、梨香の手作りケーキを食べ損ねた…。


連れ戻されてから、2ヶ月が経とうとしている。



最近は、とりあえず大人しくしているので、縛られることはなくなった。


軟禁状態というところか…。



そんな時、部屋に1人の女が辺りを伺いながら入ってきた。



彼女は、ここの当主…つまり僕の父親に当たるのだが、そいつの愛人。


離れにいるとはいえ、同じ敷地内で本妻と平気で暮らす程だから、かなり神経が図太いと思われる。


父の子を産んだために、この敷地内に住むことになったというのが経緯らしい。



「離れにいるはずのアンタがこんなところに来たことがバレると、あの女に嫌みの1つでも言われるんじゃないの?」


「そんなことよりも、アナタに会いたいっていう女性がいるのよ。」



梨香か…?



愛人がここに来たということは、監視は手薄かな…?



「分かった、すぐに向かう。」



使用人たちが使う勝手口に待たせているというので、1階まで降りてから監視の目を盗み、窓から出る。



勝手口に辿り着いたものの、そこには誰も見当たらなかった。