式典後のHRで、蒼先生は坂下先生から手紙を預かっていることを告げた。


数学科教材室まで、出席番号順に取りに行く。




私は最後に行き、その手紙を受け取った。


「なあ、梨香。

今日の式典で、僕のこと嵌めただろ?」


「坂下先生と、賭けてたの。

…ごめんね。」


「全く、あの人は…。」


「結局、不敗神話破れなかった。」


「無謀だな、梨香は…。

僕が何度挑戦しても失敗してるの、知ってるだろ?」



教室に戻ろうとした時、蒼先生に引き止められた。




「誕生日おめでとう、手出して。」


言われたとおり、両手を差し出す。


手のひらを、上に向けて…。



「違う、こうするの。」


蒼先生は私の左手を取ると、手の甲を上に向けた。



そして、ピンク色の石がついた指輪を、薬指にはめてくれた。



「これ…。」


「短大行ったら、なかなか会えなくなるからね。

僕の彼女だから手出すなよって牽制も兼ねて、彼氏いますっていうアピール。」



それ…だけ?


指輪が貰えたのは、嬉しい。



でも、贅沢な話かもしれないけど…。



この指に指輪をはめてくれるのなら、将来の約束の言葉も欲しかった。



いつになったら、くれる?


それとも…私じゃ、ダメなの?