HR後、蒼先生に呼ばれて数学科教材室に向かった。



「坂下先生のお見舞い、入院してから早いうちに1回だけ行っておいで。」


「1回って…何回も行っちゃダメってこと?」


「坂下先生には、受験のことで気遣うことなく、治療に専念して欲しいんだよ。

僕からもクラスのみんなには言うけど、またお見舞いに行こうって話が出たら止めてくれないか?」


「うん…、分かった。」


「それと、来週のデートと初詣、キャンセルするから…ごめんな。」


「えぇーっ!私、楽しみにしてたんだよ?」


「知ってる、だから…ゴメン。」


「何で?」


「坂下先生の代わりを務めるのに、勉強しなきゃいけないことが山ほどあるんだ。

それに梨香だって受験生なんだから、勉強しなきゃマズイんじゃないのか?」



私はデートっていうご褒美があるから、勉強も頑張れるのに…。


ご褒美なくなっちゃったら、頑張れないよぉ~。


でも、お仕事の邪魔したら彼女失格だよね…。


ガマンしなきゃ…。



「バレンタインデーのころには梨香の受験も終わってるし、お部屋デートしようか。」


「先生のお仕事、忙しいんじゃないの?」


「梨香、ご褒美ないと頑張れないだろ?」


「どうして分かったの?」


「顔に書いてある。」



そう言って、蒼先生は私の頭を撫でた。



そして、いつも学校じゃキスしないのに、今日だけ特別に頬にキスしてくれた。



「しばらく構ってあげられないから、罪滅ぼし…ってとこかな。」