隼人との最初の出逢いは、たったそれだけのほんの少しも衝撃を与えない事務的なものだった。
ただ偶然に通りすがった道で見つけた綺麗なもの。
無性に欲しくなったわけでもなく、ショーウインドーの中に飾られた高級なブランド商品のように、祥子とは違う世界の始めから手の届かない存在として祥子の意識のカテゴリーにしまい込まれた。
隼人はそんな存在だった。
綺麗なものも、いつもの道にいつもあれば当たり前のようになり、その後の病院通いでは隼人もそんな存在になった。
会釈以外にこれといって隼人と言葉を交わすこともなく、院内で見かけない日もあった。
電車で痴漢と間違うような行為を隼人にされるまで、病院通いも正味五回程。
病院通いも終われば、二人はただの他人に戻っていたはずだった。
電車での出逢いが偶然だったのか、意図的だったのか、運命だったのか……。
今更確かめなくても、今こうして隼人と過ごす日々が現実なのだ。
そう祥子は思っていた。