葉太と同じように、希龍くんも最近は安田さんの家に帰ってこない。

だから会うのは久しぶりだった。

「何だ、だったら言えよなー。」

会いたくなかったのに。


「あ…あたし…っ、花瓶の水変えてくる…」

花瓶を持って、部屋を飛び出した。


もう何日、希龍くんとまともに話してないだろう。話す機会は何度もあった。

話しかける勇気がなかっただけ。


こんなとき、春斗がいたら何て言っただろう。

怒ったかな。

それとも、慰めてくれた?

……なんて、バカみたい。

春斗は今必死に戦ってるのに、あたしは自分のことばかり。

余裕、なさすぎ…


好きな人に彼女がいた。

好きな人が遊び人だった。

それだけ。

それだけ、納得すればいい。

どうしてそれが出来ないんだろう。