飯田咲枝は一人海を眺めていた。 あの日の後悔と悲しみが心にうずいている中。 「お兄ちゃ~ん」 ふいに声が聞こえて振り返ると4、5歳ほどの子どもが兄を呼んでいる様子が見えた。 子どもは自分の思うままに海に入り、はしゃいでいる。兄は注意しながらも楽しそう。その傍らの浜辺に両親は嬉しそうに笑っている。 「幸せそう」 そう咲枝は呟くと、澄んだ青い空を仰いだ。 かつての咲枝と咲斗の様な兄妹の笑い声を聞きながら。