シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


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黄幡塾、特待生校舎内――。


由香ちゃんの手形が6つになったドアを開けて、中に僕達はいる。


――塾…ですか? いつもあんな感じで…。生徒さん? さあ……?

――たまに、背の高いイケメンが、女子高生と…あの塾の前で話し込んでいるのは見たことはありますけれど。その後は中に入ったかどうかまでは判りません。


「師匠、ボクはバイク諸共、こっちの窓から自警団を見張っているからね!!」

「何かあったら呼んでくれよ」

「了解。見てるだけでも芸ないし、ボク…神崎にも連絡とって見るよ」


僕の携帯の時計はあと7分程で、芹霞との約束の時間になる。

30分待っても連絡がなければ、バイクを飛ばして雑司ヶ谷に行く。

10分も時間をかけずに。


僕はすたすたと、受付と書かれた場所に進んで行く。


「……」


この閑散とした空気。

人の気配は全くしない。


行き着いた受付の窓口。

透明なガラス戸を横に開いて、一応声をかけてみたけれど…僕の視界の中には、人影はまるで存在しない。


お昼休み…にしては、時間が過ぎている。

休憩中にしても、全員いなくなるというのはおかしくないか。


僕は辺りを注意深く観察してみた。


違和感。

一体何だろう。


建物の内装は、立派な作りだと思う。

曲線的なデザインが凝っていて、まるで一流企業のようで…。


「……?」


指で触れる処、埃が舞う。

舞いすぎる。


どうして手入れがなされていない?

止まったままの時計といい、少なくとも塾ならば、少人数の精鋭とはいえ生徒が通ってくるんだ。

青々と茂った観葉植物だと思えば、それは天然ではなく模造品で。

白い床にもやはり埃が溜まり、多くの足で踏まれた形跡がない。


どこもかしこも埃が被りすぎている。


「おかしい…」


この建物は、特待生の…というより、塾として機能していないのではないか。


僕は事務室に続くドアを蹴破った。

埃と共に向こう側に倒れるドア。


並んだ事務机の上には、埃以外何もない。

窓口の近くの棚にも、書類を入れるトレイにも何一つなく。


消えた、というより元よりないんだ。


ということは――?


「特待生を受入れる塾ではないのか?」


だとしたら、何の為にこの塾が存在している?

何の為の特待生制度だ?

しおりまで作っておいて?


僕は事務室から出ると、溜息をつきながら電話を折り畳んだ由香ちゃんと目が合った。


「師匠? どうしたんだい、そんな怖い顔して!!」

「由香ちゃん、ここはおかしい」

「え?」

「特待生は存在する。だけど…多分、ここには来ていない」

「は!? だって入塾のしおりには…」

「……。来るよね、それを渡されて。だけど…ここには通ってきていない。誰一人として。ここは…ただのダミーだ」

「何だって!? だけど七瀬は、先輩が特待生になったって言ってたぞ!?」


それは確か――。


「紫茉ちゃんが見えなくなった…先輩か」


関係…あるんだろうか。