「とんずらとは聞こえが悪いじゃないか。俺はお前さん達が、あそこを切り抜けると信じたからこそ、次の…この地点で待っていたんじゃないか。がははははは!!」


声だけ聞いていれば、やっぱりクマだ。

口調はおっさんだけど、喋っているのは若々しいイケメン。


以前はそのギャップに驚き、食い入るようにまじまじみつめていたけれど、新たに急成長したクマのヒゲに記憶を上書きされていた今、また前と同じ反応を繰り返しているような気がする。

予備知識があったはずなのに、やはり摩訶不思議現象。


鬱蒼と茂った髭をとったら、どうしてこうも爽やかな顔が出て来るのか。

予想外すぎる美男子ぶり。

俺も坊主頭にしたら、イケメンになれるんだろうか…。


………。


――僕の巣をどうしてくれるんだよ!!


……なんで、イケメンの想像より、あのチビリスの憤慨ぶりの方が、リアルに想像出来るんだろう。


しかも速攻追っ払いたいはずなのに、"しばらく髪切らないでやるか"とか思っちまうんだろう。


考えるべきところはそこじゃねえだろ。


「ん、どうした? 再会の感動で言葉も出ないのか、がははははは!!」


クマがあの忌まわしきワンコゲームを作り、玲も一目置く機械従事者だということは知っていたけれど、正直玲以上の実力とは思っていなかった。

こいつが玲が目をきらきらさせそうな…明らかにすげえ機械、この監視システムを組み立てたって?

それだけじゃねえ。

恐らくこの流れでいけば、あのドアをあける"ちょいちょいボタン"もこいつの考案なんじゃねえか?

玲は知っているのかな、こいつの実力。


まあ氷皇が選んだ人間であるのなら、"普通に毛が生えた"程度の実力ではねえんだろうな、結局遠坂だって元々は氷皇に使われていたんだし。

それでも、ああそうなのか、こいつはすげえ奴だったのだと、素直に受容出来ないのは何でだろう。


ああ、こけしがしっかりクマを促したというのに、まるで信じられねえ。


そんなことより――

「ああ、ある意味感動だ。俺達の案内役の役目ほっぽって、苦労している俺達まで知っていてほっぽって、それで"がははは"でいいのかよ!?」


俺達見捨てて尚も平気で笑えることに、どうしてもひと言言ってやりたい。

こいつは、俺達側の"まっとう"な人間だと思っていたのによ。