「ねぇ桜ちゃん。桜ちゃんと行動するのって、S.S.A以来だね」
シャコシャコシャコ…。
あそこに……自警団が居る。
私はポケットの中の黒曜石を指で触った。
視界の中だけでも、6人。
こちらを見ながら携帯を弄っている。
私を"ガイダー"として特別視していた以前を思い出すが、今、根拠となった青い服は着ていない。
約束の地(カナン)にて着替えてしまっていたから。
対外的に自警団を制するものがないのだとすれば、穏便にやりすごすことは出来ないようだ。
警戒に顔を強張らせていたそんな時、耳に届いた芹霞さんの声。
自警団には気づいていないらしいけれど…。
「あの時もすごく心強かったよ、あたし。桜ちゃんは男の子だって、すごく感じたよ」
………。
どうしてこの人は…。
ボクヲミツケテ。
モットモットボクヲカンジテ。
「ツインテールの桜ちゃんも可愛いけど、短髪の今の男の子バージョンの桜ちゃんもすごく格好……」
――駄目だ!!
「静かにして下さいッッ!!」
私は目をぎゅっと瞑り、頭を振りながら声を荒げた。
芹霞さんの視線を浴びない、後ろでよかったと思う。
「……自警団が走ってきてます。排除しますから」
「自警団!? 頑張って漕ぐよ!!」
ジャコジャコジャコッ!!
さらに音はおかしな響きになっていたけれど。
切なくなる。
約束の地(カナン)の時から"男の子"であったと認識されても、ただそれだけ。
見世物小屋の住人のように、興味を引くことが出来ても…ただの世間話のように、簡単に過ぎ去るだけ。
進みはしない。
――玲くんが好きです。
玲様には…違ったのに。
――あたしは、紫堂櫂を愛してる!!
櫂様に感じていた"異性"の香りを、玲様に感じているのか。
私からは感じ取れない…その香りを。
「――っ」
後部座席に立ちあがった私は顕現した裂岩糸を放ち、脇道から飛び出した自警団を掴んで、地面に叩き付ける。
「とりゃあああああ!!! とにかく突っ走るのみ!!!」
ジャコジャコジャコッ!!
自警団同士、連絡が行き渡ったのか。
至る処から自警団が待ち伏せして私達を捉えようとする。
その連絡網と包囲網は侮れない。
「うぎゃああ、あっちから自警団わんさか!! 違う道……根性の90度右折!! 行け~、玲くんほどではない……自転車ドリフト~!!!」
減速しないまま、自転車が右の細道に突き進んだかと思うと。
「うぎゃああああ、うそ~、下り階段!?
うっ、ひっ、ぎゃっ…」
突如視界が、ガクガクと不安定になる。
「駄目だ、ハンドルとられて…体が飛ばされちゃう…!!」
「フギャーー!!」
化けネコが呼応するように、絶叫した。

