頭に響くんだ。
――願い求めよ。
呪いのような言葉が。
――さすれば汝に、それを与えん。
この声音は、あの子供。
ああ、僕は――
強くなりたい!!
己の心に惑うことのない、ぶれない強さが欲しい!!
そんな時、声と足音がした。
「桜!!!」
それは、芹霞さんを両腕に抱いた玲様の姿。
芹霞さんを横におき、玲様は片膝をついて僕の顔を覗き込んでくる。
「桜、大丈夫か!!? 体…おかしなところはないか!?」
憂慮の色を濃く映す鳶色の瞳。
こんなに…心配をかけているというのに。
なにを…僕は…私は!!!
心を占めるのは罪悪感。
犯した罪の大きさに、息が出来なくなって。
「玲様、申し訳ありませんでした!!!」
私は、額を床に擦りつけるように土下座をした。
顔を合わせられるような立場じゃない。
「玲様に手を上げるなど…あってはならぬこと。
どうか…警護団長の職を解いて下さい!!」
責任を取らねばならない。
私は、玲様を二重で裏切っていた。
肉体も心も…確かに玲様に敵意を向けていたんだ。
こんな形で離れるのは、不本意だけれど…それが私の…。
「桜、顔を上げて」
「いいえ、玲様」
「桜」
「それは出来ません!!」
「……上げるんだ」
玲様の声色が急に低くなり、私は恐る恐る顔を上げた。
私を見ていたのは…えげつない顔をした端麗の顔。
ぞくりとした。
拷問でもなんでも、受ける覚悟は出来ている。
それだけの重罪を、私は犯したのだから。
何年も同居して親しくさせてもらっていたとはいえ、明らかに刃向かった事実があるのに、何もなかったような顔をしてのうのうと傍にいられる程、私の神経は図太くは出来ていない。
臣下として人間として、信頼を裏切ったことに対して、どうすべきかくらい、その身の振り方は…私はわかっているつもりだ。

