一体玲くんはどうしたんだ?
怒って嘆いて、落ち込んでしまったようにみえるけれど。
この僅かな間に、どんな心境の変化があったのかよく判らない。
あたしなんて、まだ…体から熱がひいていないというのに。
もっと…なんて思っている自分がいるのは、玲くんには言えない。
はしたない子だと嫌われてしまう。
何より誤解を解かなくちゃ。
だけど玲くんは両手で顔を覆ったまま、なかなかこちらを見てくれない。
機嫌は…どうなんだろう。
玲くんはきっとお疲れなんだ。
イロイロあったものね。
玲くんの癒しに…なれるだろうか。
あたし、"彼女サン"…だし。
………。
そう思って、こっそり玲くんの様子を見ようと、体を捩って下から覗き込んだ時、丁度玲くんが顔から手を外した。
視線がぶつかる。
「「………」」
暫く、沈黙が流れた。
詰るような眼差しを受けて、あたしから声がかけられない。
やっぱり、まだご機嫌斜めらしい。
沈黙を破ったのは、玲くんだった。
「そんな潤んだ目で僕を見るなよ。
どこまで煽れば気が済むの…?」
よく判らないことを言い出した玲くんは、その唇を尖らせている。
むくれているようにも見えるけれど、それより苦しそうにも見える表情が気になった。
もしかして、あたしへの怒りに心臓発作を起こしているのかと心配になったあたしは、
「玲くん大丈夫? 苦しいの? 発作?」
と、更に顔を近づけて声をかけてしまえば。
「……。あんな後で、そんなに無防備に近付くのは、君には大したことがないということ? それとも…僕を試しているの?」
玲くんだって近付いているじゃないか。
僅か5cmほどしかないこの超至近距離。
玲くん相手に警戒心なんてあるわけがない。
ただ…キスをしたという照れくささが残るだけだ。
「こんな距離で…君は余裕だよね。余裕がないのは、いつも…僕ばかり」
吸い込まれそうなほどに綺麗な茶色の瞳の奥に、燻る何かがある。
「また…欲しくなるじゃないか」
そして、啄む様なキスをされた。
「止まらなくなるじゃないか」

