何だか…嬉しかったんだ。

わけ判んねえけど…迎え入れられたということが。

ウジガミだとか如月煌とか、裏とか表とかそんなの無関係に、繋がった心があるというのが凄く嬉しかった。


「櫂殿、お話ヲ…」

「先程は失礼致シた。まア一杯」


櫂ももみくちゃにされている。


凄く戸惑った櫂を見るのは久々だけど…やがて笑顔に変わりゆく。


櫂だって此処まで頑張ってきたんだ。

あのいけすかねえ親父を始め、生家も、東京中も櫂の敵となって、心の拠り所とした芹霞からも忘れられて。


全てを…命すら捨てて、何もない処から頑張ってきたんだ。


なあ…迎えられるのって幸せだな、櫂。

表帰ったら、芹霞達に"おかえり"って言って貰おうな。



そして――


「サル殿、この肉をドウぞ」

「シキ殿、団子はいかガカ」

「リス殿、フルーツは…」


小猿だけではなく、料理にありつくゴボウもチビも、歓迎されていて。


横一列、目の前に積み重なっていく3種の皿の山。

大食い選手権でもしてるつもりかよ。


だけどそんな光景が微笑ましくて。

笑顔でいるということがどんなに幸せか判った気がした。


「ウジガミ様、私ニも"ニックねーム"ヲ」

「ウジガミ様から、"どンぐリ"の名前を戴いタ」


「あんたがウジガミだからって、手加減しないよ!! さあ飲み比べ勝負だ!!」

「睦月殿が倒れラレタ。しっカリ~」



わいわいがやがや賑やかな大宴会。


げらげら笑いながら居た俺は、


「……あれ? 櫂、何処だ?」


櫂の姿が見えないのに気づいて青くなった。


「やべ、俺…護衛なのに」


慌ててあたりを見渡せば、こけしもいねえ。

俺は自動ドアを出て、あたりを見渡した。


敵意も瘴気も感じねえから、大丈夫だとは思うけれど…。

そして見つけた、1つのドア。


「あ…此処に居る。櫂の気と…こけしの気だ」



そこから、聞こえたんだ。



「煌を…此の世界に残せと言うのか」



そんな櫂の声が。