シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



あたしは、クオンバックを腕に抱き、体中でクオンの耳を塞いでやる。


「超音波苦しそう。少しはマシになるといいけど」


人間の言葉がわかるクオン。

耳を塞がれてあたしの声が聞こえるか判らないけれど。


「一緒に…玲くんの力になって」


心があるならば、通じるはずだと信じてる。


クオンは紅紫色の瞳をじっとあたしに向けて、コクリと頷いた…気がした。


それは気のせいかもしれない。

だけどあたしは信じたい。


「ありがとう」


クオンと心は繋がっていると。


動物だとか人間だとかそんなの関係ない。

感情があり思いがある限り、あたし達は同じ"生き物"だ。

同等なんだから。


不意に久遠の面影が思い浮かんだ。


「同じ名前でそっくりな久遠に、一緒に会いに行こうね」


クオンが静かに笑った気がした。

歯を剥き出しにしたいつもの化け猫の笑い方ではなく、綺麗な綺麗な…うっとりしてしまうくらいの、天使のような神々しい笑みを。


久遠がもしネコになって笑ったら、こんな感じなんだろうか。

そしてまた逆に、滅多に笑わない久遠が、人間の姿のままクオンのように笑ったら…凄く見惚れちゃうかも知れないね。

何といっても"くおん"と名の戴く者は、人間でもネコでも超絶美形だから。


久遠は、クオンを見て何ていうかな。


――悪趣味だなせり。何でオレの名前をつけた?


嫌そうな顔をするのは間違いないね。


クオンを可愛がってくれるかな。

クオンは…可愛がられてくれるかな。


「ふふふふ、楽しみだなあ」


未来に希望を持つと、不思議に怖い気持ちが薄れてきた。


もしクオンに銃弾が向けられたら、あたしは庇おう。

それだけは覚悟を決めた。


とりあえず、玲くんが集中出来る時間を作らなきゃ。


あたしは息を吸い込み、吐くと同時に声を張り上げた。


「よく聞きなさいッッ!!! 何人いるのか知らないけれど、狙うならあたし狙いなさいよ!!! それともこんな素人女を射撃する腕もないの!!!?」


そう。

もし銃弾が上に向いたのなら。

少なくとも玲くんは走行の際に、周囲に気をとられなくてすむわけで。


その分、玲くん自身…虚数に操られないように、自分自身と戦って欲しい。

あたしは耐える玲くんの苦しさを薄めさせて上げられないから。


あたしは、あたしなりのやり方で…サポートするんだ!!!