あたしは、クオンバックを腕に抱き、体中でクオンの耳を塞いでやる。
「超音波苦しそう。少しはマシになるといいけど」
人間の言葉がわかるクオン。
耳を塞がれてあたしの声が聞こえるか判らないけれど。
「一緒に…玲くんの力になって」
心があるならば、通じるはずだと信じてる。
クオンは紅紫色の瞳をじっとあたしに向けて、コクリと頷いた…気がした。
それは気のせいかもしれない。
だけどあたしは信じたい。
「ありがとう」
クオンと心は繋がっていると。
動物だとか人間だとかそんなの関係ない。
感情があり思いがある限り、あたし達は同じ"生き物"だ。
同等なんだから。
不意に久遠の面影が思い浮かんだ。
「同じ名前でそっくりな久遠に、一緒に会いに行こうね」
クオンが静かに笑った気がした。
歯を剥き出しにしたいつもの化け猫の笑い方ではなく、綺麗な綺麗な…うっとりしてしまうくらいの、天使のような神々しい笑みを。
久遠がもしネコになって笑ったら、こんな感じなんだろうか。
そしてまた逆に、滅多に笑わない久遠が、人間の姿のままクオンのように笑ったら…凄く見惚れちゃうかも知れないね。
何といっても"くおん"と名の戴く者は、人間でもネコでも超絶美形だから。
久遠は、クオンを見て何ていうかな。
――悪趣味だなせり。何でオレの名前をつけた?
嫌そうな顔をするのは間違いないね。
クオンを可愛がってくれるかな。
クオンは…可愛がられてくれるかな。
「ふふふふ、楽しみだなあ」
未来に希望を持つと、不思議に怖い気持ちが薄れてきた。
もしクオンに銃弾が向けられたら、あたしは庇おう。
それだけは覚悟を決めた。
とりあえず、玲くんが集中出来る時間を作らなきゃ。
あたしは息を吸い込み、吐くと同時に声を張り上げた。
「よく聞きなさいッッ!!! 何人いるのか知らないけれど、狙うならあたし狙いなさいよ!!! それともこんな素人女を射撃する腕もないの!!!?」
そう。
もし銃弾が上に向いたのなら。
少なくとも玲くんは走行の際に、周囲に気をとられなくてすむわけで。
その分、玲くん自身…虚数に操られないように、自分自身と戦って欲しい。
あたしは耐える玲くんの苦しさを薄めさせて上げられないから。
あたしは、あたしなりのやり方で…サポートするんだ!!!

