あたしがあるのはこの身体だけ。
玲くんのような超能力もないのなら、あたしはこの身体を使うしか出来ない。
過去幾多乗り越えてきた苦境を思い返して、あたし自身成長して強くなったかと言われればどもってしまうけれど、少なくとも度胸だけはついたはずなんだ。
度胸こそが、今のあたしの力だ。
そう思えば――
「神崎芹霞、ファイトォォォッッッ!!!!」
自分を励まし、叫ぶ由香ちゃんや玲くんを無視して、ひたすら上を目指してよじ登る。
鈍った身体には、筋力に頼る辛い体勢が堪えるけれど、へこたれてたまるものか!!
あたしにだってやれば出来る子なんだ。
自分が信じなくてどうする!!
実行しない限りは、状況は何も変らない!!
耳をすませろ!!
目で銃弾を捉えられないのなら、音で違和感を感じ取れ!!
出来るはずだ!!
出来ると信じろ!!!
「……来たッッ!!!」
自分の耳と直感を信じ、よじ登ったばかりの車の上で身体をぺたりと天板につければ、思った通り…あたしが今まで経っていた場所を何かが通過していったように思えた。
そしてそれは――
「………!!!」
反対車線の車を炎上させた。
それくらいの威力があるものだと今更乍ら気づいたあたし。
寝転んでいても足がガグカクするけど、そんなの根性!!!
気合いでやりきれ!!!
怖じ気づくな、しっかりしろ!!!
「あたしは…緋狭姉の妹だッッ!!」
猛速度の中で立つのは、バランス取るのだけでも正直辛い。
だけどやらなきゃ!!!
立上がったあたしは、そこで初めて…首にクオンバックをぶら下げたままのことに気づいた。
よじ登るのに夢中になりすぎていて、こんな大きくて重いものにも気づかなかったとは。
集中力というのは凄い。
クオンが犠牲にならないように、窓から由香ちゃんに引き渡そうと思ったけれど、
「ニャアアン」
いまだ苦しげながらも、あたしを見る紅紫色に戦意があったから。
あたしと共に戦おうとしてくれているのが判ったから。
あたしの心は、クオンの心に同調したんだ。
まだ死ぬと判ったわけじゃない。
死ぬつもりは毛頭無い。
共に苦境を打開する為に、戦意を持ってくれた友として。

