シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



ふと見上げたバックミラーに映る端麗な顔は、あたしが思っている以上に苦しげで、顔色が悪い。


凄く汗を掻いている。

力を放出し続けているから?


違うと思った。

無関係ではないだろうけれど、多分…今玲くんだけが感じ取れる虚数というもの勝手が違い、玲くんの身体を蝕んでいるのだろうと思う。

人体には、弱い電気が流れているということは聞いたことがある。

あたしや由香ちゃんは変化がないことから、狙いは玲くんに絞られているのかもしれない。

不特定多数ではないこと自体、新たな虚数の登場だ。

人体の電気が虚数に変換されて出て来る被害がどういう症状なのかあたしは判らないけれど、少なくともあたしみたいに平然としていられるものではないのだろう。

全ての動きを停止させる虚数は勢いを増しているみたいだし、その影響も計り知れず、それに抵抗する力は自分で作り出さないといけない玲くん。

それだけに苦心できればいいものの、この車を走らせないと行けない状況の上、意識は常に銃弾の方向性に向けないといけないからこそ、必要以上に玲くんの身体が消耗して負担がかかりすぎているのかもしれない。

幾ら大きな力があるとはいえ、ここまで切羽詰まった状況で集中力を分散させられては、出来るものも出来なくなる。



至って普通普通のあたしは、電気の力については…どう考えても力になれないんだ。


幸いにも…あたしには虚数の力は向けられていない。

虚数を向ける価値がない為なのか、あるいは…虚数の影響が玲くん以外のあたし達にはないのかは、判らないけれど。


だったらそれを利用してやる!!!

注意すべきは銃弾のみ!!!


あたしに出来ることは1つしかない。


「神崎、何しているんだ!!!」


銃弾の軌道を、そらすこと。

玲くんの運転の邪魔にならない方向に変えること。


即ち、上へ。


だからあたしは――

窓を開けて、身体を外に出したんだ。


「神崎、危ないから戻ってこい!!!」

「ごめん由香ちゃん!!!」


あたしは足で由香ちゃんを蹴飛ばすと、由香ちゃんはゴロゴロと転がった。


「芹霞!!!? 芹霞、中に居てくれ、芹霞!!!」


この速度で、しかもこの状況で、外に出るのは無謀だと判っている。

こんなこと出来るとすれば、煌や桜ちゃんや玲くんくらいなもので、鍛錬もしていない平凡女には無理なこと。

いつものあたしなら、間違いなく…こんなことをしようとするのは、怖くてブルブル震えて縮こまってしまうだろうけれど。


そんな平和ボケしている暇がないんだ!!!

玲くんの力になりたいんだ!!!

誰でもなく、あたしが!!!