あたしは言った。
「玲くんが走行に集中出来るようにする為には、銃弾の軌道を変えないと駄目だよ!!! だったら。あたしが……きゃっ」
「うわっ!!?」
「ごめんねッッ!!! 暫く続くと思うから、掴まっててッッ!!!」
玲くんの宣言通り車は左右に振り続ける。
衝撃音が車体に響く。
「くそっ…虚数も力を増してくるのかよ!!? これじゃあ持久戦だ。こんな状態なら、走るので精一杯、制御が難しい。もっと…僕にもっと力があれば…ううっ!!!?」
玲くんが苦しげな声をあげた瞬間に、車はカクンと急停止しかけて、助手席に頭突き…と思いきや、
「ニャ………」
あたしは、宙に投げ出された状態の、化け猫の固い身体を間に挟むようにして頭突きしてしまったらしい。
その衝撃でクオンが目覚めたけれど、
「ニャアアアア……」
クオンはお上品なお顔を歪めて力ない悲痛な声を上げると、左右にふるふると振り始めた。
あたしの頭突きが凄まじくて何処か潰れて苦しんでいるのかと焦ったけれど、そうではないらしい。
バッグに固定された手(または足)を、ふさふさの耳に持って行きたがっている素振りを見せている。
耳?
「師匠どうした!!!?」
「今、凄い勢いで虚数が放たれて、僕の体内に流れる微電流が…虚数化して制御不能になり、力が使えない状況になった。今は何とか戻したけれど…、やばいな…この虚数、僕の力を無効に出来るのなら、この虚数の攻撃を凌ぐために、増産と車を動かすものの他に、僕自身の結界のと3つを同時に、しかも力を精一杯強めないと駄目だということか!!」
やばい、やばいぞ!!!
状況は段々と深刻になっていく。
玲くんの身体に取り巻く青い光が、益々輝きを増した。
「…クオンが変な声出してるね。芹霞、何かあった?」
「何かね、ずっとイヤイヤして頭振って、耳に手を触れたがってるの。あたしが頭突きしたせいかなあ」
「………。耳……。動物……。もしかしたら…この、今までとはまた違う虚数の…超音波でも感じ取っているのかもしれない」
「え?」
「くっ、また銃弾だ!!! 掴まってて!!!」
キキーっという音をたてて、車は蛇行して。
車体の何処かに、また衝撃音がした。
クオンバックの大きな持ち手を首にかけ、片手は助手席のシートの上部に巻き付けるようにして身体を固定し、もう片方の手は由香ちゃんの手を掴み、由香ちゃんが振り飛ばされないようひっぱり上げた。
「神崎、ありがとう…」
こんな…状況に流されているままでは駄目だ。
こんなの…ただ言い様に弄ばれているだけじゃないか。

