その直後、また舌打ちした玲くんがハンドルを切り、蛇行した車を銃弾が掠めた衝撃が伝わってきた。
「芹霞…気持ちは判った。だけど…トラックからの攻撃は、どういう方法かは判らないけれど、虚数の放出の他に、物理的な…銃撃もなんだ。君が外に出たら、僕は心配で心配で運転なんて出来ない。
今僕は、この運転にかかりきりだ。虚数増加によってギアは無効、アクセルは減速の一途、おまけにタイヤの動きも鈍くなってきたし、ハンドルは利きにくくなってる。今0と1を急速度で増産して、その力を全て流し込んで、無理矢理、最大速度で走らせている状況なんだよ。そこまでしないといけない程、今の虚数は異質で強大なんだ。君は、僕の見える範囲に居て欲しい。だから…はっ、ごめん、掴まってて!!」
話の途中で車体は左に急に曲がる。
今度は衝撃はこないから、完全に躱せたのだろう。
「師匠、虚数を送り込んでるトラックをまず何とか出来ないのかい? あのトラックが無くなれば、あとはこの車の運転だけで…」
「トラックからこの車に向けられて放たれる虚数の大きさは尋常じゃない。まるでレーザービームのような感じだ。それが僕のこの車を動かす為に増産している0と1を糧に、益々虚数を強め…悪循環な有様なんだ。それでも、そうでもして僕の力を注ぎ込まないとこの車は停まり、下手をすれば…今の"無理矢理"が祟って、オーバーヒートおこして爆発するかもしれない。
芹霞の言う通りトラックを奪うのはいい考えだ。この車が爆発しても走り去れる。だけどそこに乗り移るまでの"障害"の要素を……くっ、また掴まってて!!」
今度は右と左へ、カクカクと直線状に曲がり、あたしと由香ちゃんはゴツンゴツンと額をドアにぶつけた。
「大丈夫!!!? 怪我は!!!?」
「「こっちは大丈夫」」
とは言いつつ、額がヒリヒリして痛いけれど。
「もっと力を上げないと、タイヤが…車の走行向きが定まらない。あの銃弾、邪魔だな……僕の集中力をそぐ目的なんだろうが。こんなことで負けてたまるかよ!!」
玲くんが青白く発光した。
車外から流れてくる電力の力が玲くんに注ぎ込み、玲くんを通してより純度の高い青色に変って外に流れていく…そんな感じだ。
こんな状況でなければ、幻想的なその力が循環する光景に見取れてしまっているかもしれないが、今はただ…それも玲くんの負担になっているのではないかと不安愁訴にしか思えない。
だとしたら、やっぱり。
うん、この方法しかない。

