それはきっと、玲くんの集中力が散漫しているせいだと思う。
増産なら増産、戦いなら戦い、運転なら運転に集中出来る環境にあるならば、状況は変ってくるだろう。
そしてそのどれもが、あたしには力になれないもので。
玲くんに頼るしかないもので。
頼ろうとする限り、玲くんはまた"守る"という役目を担うことになる。
それが歯痒くてたまらない。
これなら完全に…足手纏いだ。
「師匠、まずこの高速を抜けようよ。抜けて何処かで車を調達しようよ。このままだと、誘われるまま鎌倉にまっしぐらだぞ?」
「今一番近い出口は、5km以上先だ。もしくは、此処でUターンして逆走するか、反対車線に出るか、あるいはデコトラの危険覚悟して、皆で飛び降りるか。どれかでなければ、都心には戻れない」
「こっちの車線は車が少ないとはいえ、高速で逆走は無謀だよ。飛び降りても、あのデコトラがやばいよな。それに対向車線にもすごい車の数だし!!」
「当初覚悟してたように、飛び降りようとも強く推せないね。確実に戦闘になる。飛び降りても、状況的に…リスクの方が大きくなった。だとしたら、出口に行くしかない。例えそれが罠でも」
悔しそうな歯軋りが聞こえる。
遠ざかる桜ちゃんとの距離。
近付く、玲くんを追い詰める人達との距離。
何とかしないと。
何とかしてこの流れを止めないと。
「また来る!!!」
車は左右に蛇行する。
「玲くん、何で来るって判るの!!? ミラーから見えるの!!? 銃持った人」
「気配だ。虚数が瞬間的に膨張するんだ」
「またあの見えない人達なの!!?」
「乗っているのか判らない。硝子が黒塗りで」
「玲くん、あのトラックを頂こう」
あたしは言った。
「今此処で飛び降りても、リスクが大きいだけだし。あのトラックに電気が走っているのなら、エンジン止まることはないだろうし」
「だけどどうやって…」
由香ちゃんが八の字眉であたしを見た。
「電気作ってこの車を運転出来るのは師匠だけ。あれに乗り込んだ奴と戦えるのも、あれを運転出来るのも、皆皆師匠だけなんだぞ? 師匠が分裂出来るのならまだしも」
「由香ちゃん」
あたしは言った。
「あたし達だって、伊達に死線をくぐり抜けてきてないんだよ。何か玲くんの力になれるはずだ」
例え紫茉ちゃんのような強さがなくとも。
「出来ないなんて諦めたくない。
それに――…
守られるだけが、女じゃない」
あたしが出来ることは、あるはずなんだ。
いや、見つけてやる。

