シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「うまい!!!」


珈琲独特の苦味が柑橘系の味に中和され、これなら俺もいける。

今度玲にリクエスト出してみよう。

玲も絵を描けるんだろうか。

そんな…日常が戻ればいいけれど。


――玲くんが好きです。


蘇った声を追い払うように、ぶんぶんと俺は頭を振った。


飲んでも飲んでも、イヌの絵は消えずに底にはりついてきて、しつこさとしぶとさは俺並みだ。

そう…俺はしぶといんだぞ、阿呆タレ。


「うめ~!! 俺好みの、砂糖たっぷり甘いココアだ!!!」


小猿も顔を綻ばせている。


「ココアに砂糖!!? お前どんだけお子ちゃまよ?」

「オレンジ珈琲の奴が何言う!!」


けらけら笑う俺に、小猿はキーキー怒り出す。


「うるせえな。そんな甘ったるいココアよりマシだろうが。つーか、何でそんなチビチビ?」

「チビ言うなよ、デカワンコ!!」

「チビはチビでもそのチビじゃなく、お前の飲み方だ!!」

「俺は猫舌なんだよ」

「猫!!!? 猿がか!!?」

「ワンコはどうなんだよ!!」

「俺は犬舌だ!!! 何処が猫に見えるよ!!?」


「そういうことを言っているから、犬だと思われるんだぞ、煌」


櫂が苦笑している。


「は!!? 俺の何処がワンコよ!!? つーか、小猿!!! 男らしくゴクッといけよ!!」

「いけたら苦労しないんだって!!! 皇城ではいっつも給仕達がフーフーしてくれてたからすぐ飲めたけど…」

「フーフー!!? 何処まで坊ちゃんよ、お前!!! ああもう、だからお前は甘ったれって言われるんだからな!! 良い機会だ。自分のことは自分でしろ!!!」

「……うん」

珍しく、小猿が反論しねえのは…こいつなりに変わろうとしているからなんだろう。


「しかし翠。お前…桜華の第二保健室で、朱貴から珈琲入れて貰ってたんじゃないのか?」


ああ、そういえば…偉く高級な珈琲豆が『翠くん専用』と書いてあると、玲と芹霞が騒いでいたような。


何だか、遠い昔のように感じてしまう。


「ああ、あれは…朱貴が砂糖たっぷりのミルク珈琲作ってくれるんだ。俺、あの豆じゃねえと飲めないんだよ、何故か」


櫂は絶句した後…


「ミルクと砂糖で薄めるのなら、あんな高い豆使ってまで珈琲を飲む意味ないんじゃないのか?」


とか何とかぶつぶつ呟いていた。