「うまい!!!」
珈琲独特の苦味が柑橘系の味に中和され、これなら俺もいける。
今度玲にリクエスト出してみよう。
玲も絵を描けるんだろうか。
そんな…日常が戻ればいいけれど。
――玲くんが好きです。
蘇った声を追い払うように、ぶんぶんと俺は頭を振った。
飲んでも飲んでも、イヌの絵は消えずに底にはりついてきて、しつこさとしぶとさは俺並みだ。
そう…俺はしぶといんだぞ、阿呆タレ。
「うめ~!! 俺好みの、砂糖たっぷり甘いココアだ!!!」
小猿も顔を綻ばせている。
「ココアに砂糖!!? お前どんだけお子ちゃまよ?」
「オレンジ珈琲の奴が何言う!!」
けらけら笑う俺に、小猿はキーキー怒り出す。
「うるせえな。そんな甘ったるいココアよりマシだろうが。つーか、何でそんなチビチビ?」
「チビ言うなよ、デカワンコ!!」
「チビはチビでもそのチビじゃなく、お前の飲み方だ!!」
「俺は猫舌なんだよ」
「猫!!!? 猿がか!!?」
「ワンコはどうなんだよ!!」
「俺は犬舌だ!!! 何処が猫に見えるよ!!?」
「そういうことを言っているから、犬だと思われるんだぞ、煌」
櫂が苦笑している。
「は!!? 俺の何処がワンコよ!!? つーか、小猿!!! 男らしくゴクッといけよ!!」
「いけたら苦労しないんだって!!! 皇城ではいっつも給仕達がフーフーしてくれてたからすぐ飲めたけど…」
「フーフー!!? 何処まで坊ちゃんよ、お前!!! ああもう、だからお前は甘ったれって言われるんだからな!! 良い機会だ。自分のことは自分でしろ!!!」
「……うん」
珍しく、小猿が反論しねえのは…こいつなりに変わろうとしているからなんだろう。
「しかし翠。お前…桜華の第二保健室で、朱貴から珈琲入れて貰ってたんじゃないのか?」
ああ、そういえば…偉く高級な珈琲豆が『翠くん専用』と書いてあると、玲と芹霞が騒いでいたような。
何だか、遠い昔のように感じてしまう。
「ああ、あれは…朱貴が砂糖たっぷりのミルク珈琲作ってくれるんだ。俺、あの豆じゃねえと飲めないんだよ、何故か」
櫂は絶句した後…
「ミルクと砂糖で薄めるのなら、あんな高い豆使ってまで珈琲を飲む意味ないんじゃないのか?」
とか何とかぶつぶつ呟いていた。

