シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そんな光景より、気になるのは睦月の言葉。


"運ばれた"?

煌が?


何で、この話の流れでそう思うんだ?


「これは極秘のことだったからな」


落ち着きを取り戻した夢路の口振りは、煌が此処に来ていたことを否定しているものではない。


「あ?」

煌は口を開けたままの顔を俺に向けてくる。


「俺知らないねえって。初めてだぞ、此処」

「記憶が抜けているようだな、そなたは」


「???」


「暁の狂犬。自意識のないそなたの治療はかなり手を焼いた」


俺は目を細める。


「俺、怪我なんてしてねえぞ? いや…した時もあるけど、俺は此処には…」



「蛆」


夢路が言った。



「蛆に塗(まみ)れたそなたが、なぜ今まで平気で"表"におった?」



「は!!? は…あああああ!!?」


煌が立上がり、声を上げた。



「それから。そなたが此処に来たのは二度目ではない。三度目だ。更に言えば…狂犬は此処で生まれ育っておる。即ちそれが一度目だ」


「はああああ!!!?」



煌は驚いた顔で固まっている。

無論俺の衝撃も強い。


確かに煌の出生は不明だったし、誰も確かめようともしてなかったけれど…、此の世界で生まれていたのか?


「睦月。そなたは1回だけ、この者に会っておるのだ。それは10年以上も前になるか。狂犬が此処を出る前に、そなた…狂犬と言い争い、狂犬の髪を暁に染めたろう。元々狂犬の髪の色は黒だったのだ。紫堂櫂と同じような」


「「えええええ!!!?」」


睦月と煌は同時に声を上げ…


「お前…記憶は全くねえけど、牛女!!! お前が俺の髪をこんなに色にしたのかよ!!!? 俺を安っぽい色に染めたのは、お前か!!!」


「知らない、こんな奴知らないよ私は!!! おばあちゃんあたしは…」


「俺だって知らねえよ、牛女!!! いつから牛になったのかも知らねえけど、俺の今までのコンプレックスは、お前が作ったのかよ!!! 返せよ、俺の黒!!!」

「そんなこと言ったって…あっ…」

「転ぶな…あ、何で俺の上に…」

「何処掴んでるんだい!!!」

「俺をその乳で殺す気か!!?」


煌の上に被さるようにして倒れ込んだ睦月。

窒息死しそうになった煌が、睦月の胸ごと押し上げて叫んで。


そして――。