思えば、芹霞にもこの痣はあった。
そして桜にもあったと言う。
桜は一度"約束の地(カナン)"にて命を落し、久遠の術によって生き返った。
俺はその場を目撃していたわけではないけれど、そう聞いている。
血色の薔薇の痣は…死から蘇生した者の証、とでもいうのか?
「これは…久遠に踏まれて出来たものだったはず…」
俺は俺の手の甲をまじまじと見つめた。
久遠自身はどうだったのだろう。
だが久遠は13年前、刹那と融合という形で、更には魔方陣に囚われている限定的な生を受けたのであれば、それは普通の"死"とはまた違う、特殊な…例外の部類に入るのかもしれない。
「何で死んでいる者が此処に入れたんだい!! 何で死んでいるのに生者といれるのさ!! あんた不死身なのかい!!? それとも久涅みたいに無効…」
無効化の力は、此処の住人は知っているのか。
久涅が如何ほどの影響力を持っていたのだろう。
「死んだ死んだとギャーギャーうるせえんだよ、牛女。櫂は生還したんだ。ゾンビじゃねえんだよ!!! 俺達と同じ人間だ!! ただ死を経験しただけの生きている人間だ!!」
「何を簡単に言うんだよ、お前。人間は、死んだら生き返ることなんて出来るはずないじゃないか!! だから死は怖いものなんじゃないか!!!」
「んなこと百も承知だよ!!! だけど、そうしないといけねえ事情があったんだよ!!! 俺達を守って苦しい状況を打開する為に、櫂は…その恐怖を1人で背負って犠牲になったんだ!!! だから…だから皆で、櫂をもう二度と死なせないようにって、その為に強くなろうともがいてる。そんな俺達を更に守ろうと、此処に来る必要のねえ…生き返ったばかりの櫂までが、此処に来てるんじゃねえか!!! 櫂の何処が化け物だよ、すんげえ格好いい生きた漢(オトコ)じゃねえかよ!!! 櫂は…顔だけの奴じゃねえんだよ、櫂は…、」
「煌…それ以上はいいから」
「何だよ、これくらい言わせろよ、櫂!!!」
「いや…その…」
俺は耐えきれず片手で顔を隠して言った。
「恥ずかしいんだよ……」
ああ…少しばかり予想はしていたけれど。
場が――
静まり返ってしまった。

