「夢路様…」
「夢路様、しっかりなされよ…」
わらわらと…こけし様を心配する黒装束が、こけしを取り囲んで声をかけている…何とも奇妙な図。
俺達は顔を見合わせ、ぽかんだ。
その時、ダダダダと何かが猛速度で突っ込んでくる気配がして。
見れば…凄い乳を派手に揺らした着物姿の女が、裸足で髪振り乱しながら走ってくる。
「なんだありゃ……」
何と言うか…まあ、尋常ではないくらいにでかい…乳に目を奪われていた俺の前を通過した牛女は、
そして――
「帰ってきたんだね、久涅!!!!」
櫂の腕に抱きついて、その豊満な乳を押し付けたんだ。
「久涅!!!?」
思わず聞き返したのは櫂が先で。
乳に挟まった腕を抜こうとしているが抜けないらしい。
……少し困った顔をした櫂は、貴重かも。
赤くならないのは…お前、肉の塊くらいにしか思ってないだろう。
それが芹霞だったらどう反応するよ。
俺だったら…。
………。
「煩悩滅殺!!!」
ガンガンガン。
やけに勘の鋭いチビに頭叩かれた。
「待ってたよ、久涅を待ってたよ!!!
目的は達せられたんだね!!!?」
目的…?
「睦月、その者は久涅ではあらぬ」
コケこけしの凛とした声に、場の空気はまた変わる。
「は? 久涅じゃないか。何処をどう見ても…おばあちゃん!!」
「ばあちゃん!!!?」
牛女は…こけしの孫!!!?
逆じゃねえかよ、この図は…!!
「睦月、その者は久涅の弟、櫂だ。離れよ。
紹介が遅れてしまったな。妾は夢路。"藤姫"の更に遠い先祖にあたる」
待て…。
藤姫で100歳過ぎていたんなら、"遠い先祖"は何歳よ?
こんなにお肌ぷくぷくの顔をして…実はしわしわこけし!!?
「ふうん? だったら…先刻まで、のろのろ動いていたミイラのオバケ…お前の生き写しなんだ? どうりで…なんか似てると思ったよ」
こけしの目に…冷たい光が過ぎる。
「この阿呆タレ!! 黙れ!!」
ピン。
「あうううっっ」
「翠殿…夢路なる者が、三尸の親玉ということか? 戦わなくてよいのか?」
「お、俺に難しいこと聞かないで~」
「では翠殿、櫂殿の説得は功を奏して和やかになっているのか? つまりこの者達は人間だったのか?」
「だからそういうことは本人に聞いて~」
「ではでは翠殿…」
金ピカゴボウ…。
「翠殿、翠殿…」
「ひいいいっ!!」
小猿の許容外のことを執拗に聞くな、人選間違えてる。
ま、これも小猿の成長の為だ。
頑張れ?

