「お前も…そうなんだな」
憂いある切れ長の目が、もう1人の…女に向けられると、女は睨みつけるようにしていた目を僅かにそらした。
「1つ聞く。最近…此処に、男が外界から来なかったか」
突然そんな質問をし出した櫂。
「長い黒髪。アーモンド形の目。
名前を…榊という」
「は、榊!!!?」
思わず俺は叫んでしまう。
櫂の顔は至って真剣だった。
「知っテ…どウスル」
そう…機械じみた変な抑揚で言ったのはコブの男。
「健ヤカなル者が"奇形"に、こレ以上何ヲ望む」
櫂は静かに即答した。
「……"裏"と"表"の調和を」
すると奇怪な笑い声が響き渡る。
2人が…機械の声で笑っていたんだ。
「何で笑うんだよ、お前ら!!!」
恫喝すれば、またもや憎しみに満ちたような眼差しが向く。
「調和ナド…夢」
「何故そう言い切れる」
櫂がその目を真っ直ぐに受ける。
まるで…8年前、初めて俺に相対し、謝った時のような…櫂の顔。
罪悪感を感じている…翳りがある端正な顔。
櫂は…あの頃と何1つ変わっちゃいない。
「我らガ"表"でどンナ扱イヲ得たのカ、貴様ハ知らぬだロウが!! 我ラヲ哀れみ或イハ笑い者にシ、そコマデ"人間"ノ矜持ヲ満足さセタイか!!」
「同じ人間だ、俺達は。俺は…お前達を卑下させない」
「「ホザくナ!!!!」」
2つの機械の声が重なった。
櫂は立ち上がり、周囲をぐるりと見渡しながら叫んだんだ。
「聞いているだろう、この者の"仲間達"よ。どんな姿になろうと、此処に"捨てられ"ようと…人としての自尊心は、その誇りは…失われていないはずだ。
此処がお前達の"救済所"であるのは判った。だが、此処から出られない理屈はないばずだ。太陽を見たいという心がある限り、それを受け入れる者がある限り。
お前達の心は"自由"のはずだ!!!」
静まり返った中、俺はそこに…耳をそばだてている多くの者達の気配を感じた。
人が…こいつらの仲間が、居たのか?
最初から…?

