しかし――…
「師匠の力が…硝子に吸い込まれる!!?」
僕から放たれる青白い光は、透明な硝子板に阻まれて。
「何なんだよ、この硝子は!!!!」
黄色い蝶が壁のように芹霞を取り囲み、芹霞がクオンを落して座り込んだ。
それは…芹霞が命を投げ出しているようにも思えて。
「芹霞、諦めるんじゃないッッッ!!!」
硝子を壊そうと打ち付ける僕の拳が足が、血に染まっていく。
使えない外気功、そして紫堂の力。
鍛えられたはずの僕の力は、まるで役立たずで。
由香ちゃんも重いカバンを硝子にぶつけたけれど、結果は同じ。
僕の持ち札は、重いカバンと同列にしか過ぎないのか。
「芹霞ッッッ!!!」
嫌だ。
「芹霞、そこから逃げろッッッ!!!」
僕は芹霞を守ると決めたじゃないか!!
芹霞と共に生きたいんだよ!!!
「芹霞ッッ!!!」
居るのに。
こんなに近くに僕は居るというのに。
「芹霞、僕の声を聞けッッッ!!!」
届かない。
「聞けッッッッ!!!」
僕の声は届いていない。
「神崎、電話を取りだしてる。電話…そうだ、電話をかけよう!!!」
由香ちゃんが慌てて携帯電話を取りだして、芹霞にかけた。
「駄目だ、混戦のアナウンスが途切れたと思ったら、今度はずっと通話中だ!!! 何やってるんだよ、何処にかけているんだよ!!」
鳴らない僕の携帯。
芹霞が助けを求めているのは僕じゃない。
硝子一枚破くことが出来ず、ただ叫ぶしかない僕じゃないんだ!!
かつてもそうだった。
いつもいつも…芹霞が頼るのは櫂や煌で。
危機的状況で思い出すのは僕じゃない。
恋人なんて言っても名ばかりだ。
芹霞の心が…僕にないじゃないか。
「………っ!!!」
心が軋んだ音をたてた。
やり場のない想いが、全身を突き抜ける。
「あああああああッッッッ!!!!」
空を振り仰ぐように、僕は叫んだ。
全身の気が逆流した気がした。
「うわ…ボクの携帯…だけじゃない。この青いの…。此処周辺の電気から…猛速度で師匠に流れ込んでいるよ。師匠が師匠が…!!?」
何の為に朱貴に稽古をつけて貰った!!?
あの時の力を越せる実力を、まだ僕はつけていないのに。
弱い弱いだけで終わらせてたまるか!!
僕はまだ…限界じゃないッッッ!!!
――なあ玲。奥義に名前をつけないか?
名前。
名前でより一層力が引き出せるのなら。
「"サンダー――"」

