湯上がりして桜色の芹霞の肌。
石鹸の香りに僕はくらくらして…。
こちらの心など露知らず、芹霞は悲愴な顔をして、更に僕に詰め寄ってくる。
「玲くん、玲くん!!!」
ちょっと指を動かせば…多分、このタオルははらりと落ちる。
今まで落ち着いていた桜の顔が、また固まっている。
「ちょっと見てここ!!!」
そう、息巻く芹霞は、僕をベッドに押し倒して馬乗りになった。
本当に、指先で触ればひらりと取れそうなバスタオル…。
何を考えているんだ、僕は!!!
「ちょっと待って!! 芹霞、いくら何でも…」
僕は抗するように、芹霞の露になった肩をやんわりと押し返して。
その感触が…。
駄目だ、考えるな!!!
そんな葛藤知らずして芹霞は、
「玲くん、首から胸にかけて、赤い斑点が凄いの!!! 血色の薔薇の痣みたいのが出来ている付近が特に!! 別に痒くも何でもないんだけれど、尋常じゃない数なの!!!」
「「あ……」」
僕と桜は同時に、一文字だけ呟いた。
「何だろ、ねえ、何だろ!!! 変な病気かな!!?」
………。
「そういえば"約束の地(カナン)"の機械室で、皆目を真っ赤にさせてたでしょう!!? 何か感染菌でもあったのかな!!? ねえ、何かな、何でこんな斑点だらけなの、あたし!!!」
やりすぎちゃったかな…。
ああ、やりすぎちゃったね…。
これじゃあ…本当に凄すぎるね…。
「何の病気!!? 玲くんお医者さんでしょう!!?」
芹霞は…真剣で。
「玲くん、よく見て? ちゃんと診察して!!?」
僕の手を取り、首筋に触らせる。
ああ、そういえば僕…。
芹霞の心臓の傷、検診してないかも…。
入院中、際どい診察に恥じらう君は、可愛かったね…。
どうでもいいことを思い出して。
いや。どうでもいいわけではないけれど。
手術した心臓の定期検診は、担当医としては忘れてはならぬ大切なことだけれど。
だけど――…。
「何で僕…こんなに邪な方に傾くようになったんだろう」
そう言いながら、僕のつけた赤い痕を触る僕。
――玲くん、発情するの、しないの!!?
「玲くん、どう!!?」
「はあ……。大丈夫だよ…芹霞。だからね…もうちょっと離れようね。桜の目が泳ぐ程、そんなぐいぐい体を押し付けるのはよそうね。
清く正しく美しく。
自信ないけど…君も自覚しようね」
僕は、溜息をついた。

