煌の頭から憤然と飛び降りた護法童子は、
「小癪な、三尸!!!
急急如律令!!! 三尸滅せよ!!!」
今度は術ではなく、片手の剣を振り回して斬り付けていく。
弾丸のように突っ込んで、旋風のように回転し…まるでCG並みの剣捌き。
…しかし、途中で休憩を入れないと続いていかないらしい。
「すげえ…あいつ、武具の使い方が…半端ねえ…。体力ねえのは小猿譲りか。ゴボウまで残念なサルか。でもあんなちっこい剣でなんでスパスパは見事なもの。負けてられねえよ、俺だって」
煌も追従するように、偃月刀で斬り付ける。
そして――
「剣が何さ!! 僕だって、えいえいえいッッ!!!」
煌の頭の上から、鉄の胡桃が無尽蔵に飛び交う。
彼らの攻撃は、確実に蚕を捕え…その腹に命中し――
「!!!!」
それを見た俺は――
「全員、攻撃をやめろ!!! 破裂した腹部から…何かが出て来る!!!」
大声で全員を制した。
腹部は表皮より堅い皮で覆われでもしていたのか。
腹部以外は切断できているのに、腹部に関しては…皆の武器はその保護膜たる腹の外側を破壊しただけで、その内側に内包された"何か"にまでは届かなかったらしい。
内部の…"羊膜"ともいうべき、黄色い粘膜を飛散させ、どろどろに溶けていく蚕の表面。
それはかなりの悪臭を放った。
「「おえっ…」」
煌と翠が同時に声を出して。
「僕も…おえっ。…吐きそう…」
「は!!!? 吐く!!!? 俺の頭で吐くな、降りろ!!!」
「動けない。吐く…」
煌は本当に苦労性だと思う。
レイを頭上から摘んで地面に下ろし、吐いている間中…指でレイの背中を摩って声をかけている。
そんなほのぼのした光景とは裏腹に、巨大な蚕から現われたモノは――
「!!!!」
此の世の者とは思えぬ、
悍(おぞま)しき生物だったんだ。
蛆の形にも似た、丸みを帯びた大きな体。
巨大な…ナメクジといった方が妥当か。
顔があるのか判らないが、先端にある触手のようなものがゆっくりと伸び縮みしている部分があるから、もしかすると口…なのかもしれない。
青みがかった、茶色の粘膜で覆われた肌には、無数の膿疱のようなものが出来ていて、急に膨れたかと思うと破裂を繰り返し…その度に、悪臭漂う体液を放っている。
そんな胴体からは、ねばねばとした…イソギンチャクのような細やかな繊毛…擬足のようなものが出ていて、それを滑らすようにして動いているらしい。
動く度に、粘着質な音がする。
ぬちゃり。
びちゃり。
戦慄。
悍しさに、鳥肌が立ってくる。
あれは…何なんだ?

