「ふぬぬぬぬ。小癪な…我がこんな瘴気如き、消せぬとは…」
「無理すんな、小小々猿!! 体が小せえから、お前が思ったより力が出ねえのかもしれないぞ」
「ならば大きなワンコ殿は…"この程度で"思った以上の力なのか」
「……。お前、何気に無礼な奴だな!!!」
「ワンコは馬鹿だから力がないだけさ!! ゴボウ、体の大きさは関係ない。力はね、高邁な精神に比例するんだ!!!」
そうレイが声高らかに叫んだ時だった。
瘴気が蠢き、1つに纏まり始めたのは。
言うなれば――
気体が固形化するように、形を現わし始めたんだ。
「「「!!!!?」」」
感覚の対象物が、視覚の対象物へと――
変貌を遂げていく。
そして輪郭を浮き彫りにさせる。
あれは――
「「「蚕(かいこ)!!!?」」」
此処でも現われるのか。
蛆を模した、巨大な蚕。
半透明の乳白色。
窄んだ両側先端がぴくぴく動いている。
その中に、何かが入っていて…びくんびくん蠢(うごめ)いている。
それはどの場所で目にしても、変わらぬ光景だった。
その数は…10、20のものではない。
大群だ。
「あれは…三尸!!!」
強張った翠の…いや、護法童子の声が響く。
三尸といえば…朱貴が以前遠坂の口から奇妙なものを取出したことを思い出す。
陰陽道に関わる人間でも式神でも、三尸というものは邪なもので、見過ごすことが出来ない存在らしい。
護法童子が、怒りにも似た…挑戦的なオーラを纏ったように思えた。
悪鬼を退散させる…それが護法童子の本来の性なのかも知れない。
そして――
「ぬぬぬ、三尸は悉(ことごと)く…我の力に滅せよ!!」
バリバリバリ…。
しかしその雷撃は――
「なに!!? 吸収された!!?」
蚕に綺麗に吸い込まれていき、更に膨らんだ蚕の胎動が早くなった気がする。
「「なにやってんだ、ゴボウ!!」」
続いてレイと煌が力で攻撃しても結果は同じことだった。
蚕には力が通用しない。
それは俺の経験してきた記憶と同じ。
この蚕は"力"を吸収していることは間違いなく、膨らみきった腹は…今にも破裂しそうだ。
破裂したら――
何が出て来るんだ?

